AIのある仕事、はじめの準備
AIを入れたら、すぐに自分の仕事を分かって動いてくれる。そう思って頼んだのに、毎回説明し直したり、別の仕事の指示が混ざったりしていませんか?
今回は、5つのお店を運営する話を通して、AIに仕事を頼む前に、何を整えておくとよいかを考えます。実在の店舗の紹介ではなく、仕組みをイメージするためのたとえ話です。

写真はAIで作成したイメージです。実際のObsidian画面や当社の店舗・作業風景ではありません。
01 / 最初に、たとえの対応を確認
5つのお店=5つの仕事を担当するプログラム
あなたが、これから5つのお店を運営するとします。カレー屋、お菓子屋、花屋、美容室、洋服店です。仕事を一人で全部こなすのは大変なので、それぞれの仕事を手伝う仕組みを用意したいと考えました。
この話では、次のように置き換えます。
お店 = 仕事別のプログラム
お店ごとの手引き = その仕事の指示
会社共通の決まり = 共有する指示
プログラムとは、パソコンに作業の手順を実行させるものです。ここでは、一つの仕事を担当する仕組み全体を「一つのお店」にたとえています。
現実には、店舗を開く必要はありません。たとえば、ブログを作るプログラム、写真を整えるプログラム、売上を集計するプログラムなど、役割が違う仕組みを、それぞれ違うお店だと思って読み進めてください。
AIは、こうした仕組みを作ったり、使ったりする手助けをします。ただし、すべてのプログラムがAIを使うわけではなく、プログラムに文章の指示を置くだけで自動的に動作が変わるわけでもありません。指示を読むAIや、設定を使う仕組みが必要です。
今回登場する5つのお店
詳しく見る2店舗:カレー屋・お菓子屋
ほかにもある店舗:花屋・美容室・洋服店
まずは2店舗だけを詳しく見てみましょう。
02 / 違う仕事の指示を混ぜると?
カレー屋で覚えたことを、お菓子屋でも使ったら
最初に、カレー屋の仕組みを整えました。家族で来るお客様に食べてもらいたいので、「辛さは控えめ」「盛り付ける前に味を確認する」という決まりにします。担当するAIにも、その手引きを読んでから作業してもらいます。

しばらくして、次はお菓子屋の仕組みを作ることになりました。今度はケーキを作ります。必要なのは、生地の分量、焼き時間、仕上がりの確認など、お菓子屋のための手順です。
ところが、カレー屋の手引きとお菓子屋の手引きが、一枚のメモに区別なく書かれていたらどうでしょう。「辛さを控えめに」という指示が、お菓子屋の仕事にも関係するように見えてしまいます。
人間なら「これはカレー屋の話だな」と気付くかもしれません。でも、AIにどの仕事の条件なのかを伝えなければ、意図どおりに使い分けてくれるとは限りません。
だから、店ごとの手引きを分けます
カレー屋だけ:辛さ・具材・カレーの仕上がりの確認。
お菓子屋だけ:生地の分量・焼き時間・お菓子の仕上がりの確認。
実際のパソコンの仕事でも同じです。ブログ用に決めた「親しみやすい文章にする」という指示を、売上表の金額計算にまで持ち込む必要はありません。違うプログラムには、違う仕事の指示があるからです。
04 / 5店舗で終わらない
仕事が広がると、プログラムも増えていく
最初はカレー屋の仕事だけでした。次にお菓子屋が加わり、花屋・美容室・洋服店へと広がりました。でも、実際の仕事はそれぞれのお店の中でも増えていきます。
たとえば、カレー屋で「毎日の売上をまとめたい」と思えば、集計する仕組みが必要になります。お菓子屋で「予約の一覧を作りたい」と思えば、予約を整理する仕組みが必要になります。さらに、各店の商品写真を整えたい、ブログを書きたい、在庫を確認したい、と仕事が増えるかもしれません。
パソコンでも、一つの作業を助けるプログラムから始まり、別の仕事のプログラム、一つの仕事を細かく分担するプログラム、複数の仕事で共通に使うプログラムへ広がっていくことがあります。

調理器具は、「一つのプログラムの中の道具」に当たる
ここでカレー屋の中をのぞいてみましょう。作業を始めるときには、まな板、包丁、鍋、お玉を順に用意します。お店が一つでも、使う道具は一つではありません。
今回のたとえでは、お店が仕事全体を担当するプログラム、調理器具はその中で使う処理や小さなプログラムです。たとえば、ブログ作成の仕組みの中で、写真サイズをそろえる小さなプログラムを使う、といった関係です。
つまり、お店と調理器具を同じ大きさのものとして扱うのではなく、「仕事全体」と「その中で使う道具」として見分けます。
増える前に、置き方と頼み方を決めておく
5店舗が10店舗、使う道具が何十個となってから、「どれが今の手順?」「この道具はどの仕事のもの?」を調べるのは大変です。
最初に、共通の指示・仕事別の指示・プログラム・完成品の場所を決めておくと、増えたときにも同じ考え方で整理できます。基本設定は、今日動かすためだけでなく、明日仕事が増えても続きを始められるようにする準備なのです。
05 / 最初に整えること
AIを仕事に迎える前に、5つを決める
ここまでの店舗の話を、ご自分のパソコンの仕事に戻してみましょう。いきなり5つのプログラムを作る必要はありません。最初の一つの仕事で、次の準備から始めます。
- 何の仕事をするか「集客のために、お店のブログを作る」など、目的を決めます。
- 共通で守ることは何か未確認の情報を断定しない、公開前に確認する、などを残します。
- その仕事だけの条件は何か誰向けの記事か、どんな言葉で伝えるか、といった条件を分けます。
- どこに保存するかObsidianで読むメモ、プログラム、完成品の置き場所を決めます。
- AIへどう渡し、どう確かめるか必要なメモを読ませ、理解した条件を確認してから始めます。
ファイルを読めるAIツールなら、読む場所や範囲を指定します。パソコンのファイルを直接読めないチャットなら、必要なメモを貼り付けるか、対応していれば添付します。使える方法はAIツールによって違います。
同じフォルダーに置くだけで、AIが自動的に共有・使い分けするわけではありません。使う仕組みがそのメモを参照するように整え、最初に正しい条件を受け取れているか確認します。
たとえば、お店のブログを初めて作るなら
集客のために、お店のブログを始めるとします。お店の日々の工夫を知ってもらおうと、最初の記事に「仕事でAIを使ってみた話」を選びました。読者は、AIをまだ使ったことがないお客様です。
AIに文章を作ってもらい、読み返すと、文章だけでは作業の様子が浮かびにくいと感じました。そこで、「仕事を引き継ぐ場面なら、ノートを見せて説明している写真を入れよう」と、説明に合う写真を増やすことにします。

ここで、「写真を増やす」をすべての仕事の共通ルールにしてしまうと、写真の要らない集計作業にも関係があるように見えてしまいます。これは、このブログの読者に伝えるために決めた条件です。
ブログ用の手引きに残す内容
目的:お店の工夫を知ってもらう。
読者:AIをまだ使ったことがないお客様。
今回の決定:作業の様子が分かる写真を、説明に合わせて入れる。
理由:文章だけでは、初めての人が場面を想像しにくかったため。
次にすること:写真と説明が合っているか、スマホでも読めるかを確認する。
翌日、続きを頼むときは、共通の決まりと、このブログの手引きを渡します。売上集計など別の仕事の条件は、今回の指示へ混ぜません。
会話の途中で決まったことを、次の仕事へ残す
カレー屋の仕事を進める中で、確認する順番や担当者の役割を変えたとします。相談の途中には、採用しなかった案も混ざっています。次の担当者が会話を全部読み直すより、現在の決定と理由が手引きにまとまっていれば、今使う条件を確かめやすくなります。
今後も使う決まりは手引きへ、今回どこまで終わったかは作業記録へ。会話の全文を写すためではなく、次の仕事へ引き継ぐために残します。チャットでの相談が一度で終わるなら、大きな仕組みを用意しなくても構いません。
続き:チャットで済むことと、仕事へ残すこと
一度の相談ならチャットで十分です。では、店舗やプログラムが増えると何が変わるのか。カレー屋の続きを例に、手引きと記録を別に残す意味を説明します。



