AIのある仕事 / 5つのお店の続き
「AIに事情を説明して相談するだけなら、チャットで済むのでは?」
はい。一度の相談なら、チャットだけでも十分です。
では、前のページのカレー屋に加え、お菓子屋、花屋、美容室、洋服店の仕事まで任せたいときはどうでしょう。ここでは使い方の手順ではなく、仕事が増えると、なぜ指示や記録の置き方を考える必要が出てくるのかを説明します。

店舗・会話は仕組みを説明するための架空の例です。写真はAI生成のイメージです。
カレー屋の相談が一つなら、チャットで足りる
カレー屋の店主が「明日の準備で確認しておくことを整理したい」と考え、AIへ相談したとします。予約人数や、お店で決めている手順など、必要な事情を伝えれば、チャットの中で相談を進められます。
その日の相談が終われば目的も達成できます。このためだけに、別のアプリや大きな仕組みをそろえる必要はありません。
Obsidianが必要になるかを考えるのは、その場の相談を越えて、同じ決まりを何度も使い、複数の仕事へ引き継ぎたくなったときです。
翌週、お菓子屋の仕事も増えたら
カレー屋の相談が役立ったので、次はお菓子屋でもAIを使うことにしました。お菓子屋には別の手順があります。カレーの辛さの条件は関係ありません。
ただし、「分からないことを勝手に決めない」「店の責任者が確認してから使う」という決まりは、両方に守ってほしいものです。
あなたはお菓子屋の相談でも共通の決まりを説明しました。その後、花屋、美容室、洋服店でも仕事を始めます。相談するたびに共通の説明を繰り返し、お店ごとの条件を付け足すことになります。

さらに一か月後、会社共通の確認方法を変えることになりました。どの会話で何を伝えたか、どこに古い条件が残っているかを確かめるのは、少しずつ大変になります。
チャットが使えないのではありません。会話で相談することに加えて、「いま使う決まりの正本」をどこに残すかを考える場面になったのです。
会社共通の手引きと、お店ごとの手引きを残す
そこで、あなたは会社共通の決まりと各店の手引きを、会話とは別の場所へまとめました。今後その仕事をするときは、この手引きが現在の方針だと分かるようにします。

共通の決まりを変えたら、まず共通の手引きを更新します。カレー屋だけの変更なら、カレー屋の手引きを更新します。古い条件が混ざらないよう、変更日や、今どの方針を使うかも残します。
ただし、手引きを更新しただけで、すでに動いているすべてのAIやプログラムへ変更が自動配信されるわけではありません。担当するAIや仕組みが、必要なときに現在の手引きを参照する関係が必要です。
Obsidianは、その手引きを読み書きし、整理するためのアプリです。普通のメモでも始められますが、仕事別の資料や過去の判断が増えると、検索したり関連するメモをつないだりできることが役立ちます。
手引きの保管庫と、作業するプログラムは隣にある
手引きができたら、その資料を集める場所と、実際に仕事を進める仕組みの関係を整理します。資料室の中へ全店舗を押し込むのではなく、共通の仕事場の中に、資料室と各店の仕事場があるイメージです。

この図では、「みんなの仕事場」の直下に「Obsidianの保管庫」と「仕事別のプログラム」が並びます。保管庫には、共通の決まり、各店の手引き、作業記録があります。プログラム側は店舗ごとに分かれ、その中に道具や完成品があります。
この構造は、何を読むかと、どこで作業するかを分けて考えるためのものです。フォルダーの名前や位置が決まっているだけで、AIとの連携が完成するわけではありません。
また、このページの「お店」は仕事全体を担当するプログラムのたとえです。カレー屋の中に鍋や包丁があるように、一つのプログラムの中で、さらに小さな道具や処理を使うこともあります。
5店舗の次には、各店の中の仕事も増える
カレー屋で相談をするだけだったところから、今度は「毎日の売上をまとめる」「予約の一覧を整える」といった作業も手伝ってほしくなったとします。お菓子屋でも、また別の仕事が生まれます。
一つの相談が、一つのプログラムになり、その中で使う小さなプログラムも増える。さらに店舗が増える。そうなると、何のための道具か、どの条件で動かすか、どこまで確認したかを残しておく意味が大きくなります。

たとえば、カレー屋の予約一覧を作る仕組みと、お菓子屋の商品写真を整える仕組みでは、仕事の条件が違います。全店共通の決まりは引き継ぎ、予約に関する条件はカレー屋の該当作業へ、写真の条件はお菓子屋の該当作業へ適用する、と考えます。
何でも一つのチャットに詰め込むより、共通で使うこと・今回だけ使うこと・実際に動かす仕組みを見分けられる状態が、仕事の拡張を支えます。
残すのは、会話の全文より「次に使う決定」
カレー屋の予約一覧を作る途中で、古い予約と新しい予約の見分け方を変えたとします。会話の途中には、試しただけの案も、採用しなかった案も残ります。
次回、担当がその会話を最初から読み、どれが最終決定かを探すのは手間です。そこで、今使う見分け方と変更理由は手引きへ、今日はどこまで確認したかと残りの作業は記録へまとめます。
ここでの記録は、チャットの代わりに毎日長い日記を書くためのものではありません。別の日や別の担当でも、決まったことを確認して仕事を続けられるようにするためのものです。
Obsidianを使えばAIが自動的にすべてを覚える、という話でもありません。メモを読めるAIツールの設定、参照する資料の指定、人による確認など、それぞれの環境に合った仕組みが必要です。手動で内容を渡して使う方法もあります。
チャットで相談し、仕事に残すものを育てる
その場の質問や一度だけの相談なら、チャットで済ませて構いません。仕事が続き、使うプログラムが増えたときに、毎回説明し直したくない条件や、混ぜたくない別の仕事の指示が出てきます。
そのときのために、会話で考える場所と、決まった知識を残す場所、作業を進める場所を用意しておく。これが、この2ページで伝えたい準備の考え方です。Obsidianは、その中の「知識を残し、整理する場所」を支える選択肢です。
