ガーメントプリントは、Tシャツなどの衣類へインクジェット方式で直接印刷する方法です。英語のDirect to Garmentを略して「DTG」、日本では「ガーメント印刷」「ダイレクトインクジェット」とも呼ばれます。版を作らず、写真や多色デザインを1枚から印刷しやすいことが特長です。

ガーメントプリントの仕組み
家庭やオフィスのインクジェットプリンターが紙へ印刷するのに対し、ガーメントプリンターは衣類を平らなプラテンへ載せ、布用インクを生地表面へ直接吐出します。淡色生地はカラーインクを直接印刷し、濃色生地は発色を確保するため、一般に白インクの下地を印刷してからカラーを重ねます。
- データを準備:画像サイズ、背景透過、色、印刷位置を確認します。
- 衣類を確認:素材、色、縫い目、ポケット、厚み、表面加工を確認します。
- 前処理:濃色生地で白インクを使う場合など、必要に応じて前処理剤を塗布し、熱で乾燥・定着させます。
- 衣類をセット:しわや段差を避け、印刷面をプラテン上で平らにします。
- 直接印刷:白下地とカラーを機種・データに応じて印刷します。
- 加熱定着:熱プレス機または乾燥機で、インクメーカー指定の条件に従って定着させます。
前処理、白インク、加熱条件の有無は、プリンター、インク、素材、衣類の色によって異なります。実際の製造では、使用機器と消耗品メーカーの指示を優先します。
対応しやすい素材
一般的な水性顔料のガーメントプリントは、綿を多く含む生地と相性が良い方式です。ブラザーは、白インクを使う濃色生地では綿100%、カラーインクのみの淡色生地では綿100%またはポリエステル50%程度までの混紡を推奨条件として案内しています。ただし、これは同社機器の目安であり、すべてのDTG機・生地へ一律に当てはまるものではありません。
| 素材・状態 | 適性の目安 | 確認点 |
|---|---|---|
| 綿100%・淡色 | 適しやすい | 生地の毛羽、吸水性、色 |
| 綿100%・濃色 | 適しやすい | 前処理と白インク下地 |
| 綿・ポリエステル混紡 | 機器・混率による | 発色、染料移行、前処理跡 |
| ポリエステル100% | 専用条件が必要 | 染料移行、熱、インク対応 |
| 撥水・防汚加工 | 不向きな場合がある | インクや前処理剤の密着 |
| 凹凸・縫い目・段差 | 位置により難しい | ヘッドとの距離、印刷ムラ |
同じ「綿100%」でも、編み方、毛羽立ち、染料、柔軟剤、表面加工により仕上がりは変わります。本生産前のテスト印刷が重要です。
メリット
- 版代が不要:色ごとのスクリーン版を作らないため、小ロットや試作に向く。
- フルカラーに対応:写真、グラデーション、多色イラストを一工程のデータで印刷しやすい。
- 1枚ごとに変更できる:名前、番号、写真などの差し替えに対応しやすい。
- 輪郭形状の自由度が高い:カッティングのような手作業のカス取りが不要。
- 淡色生地では風合いを残しやすい:白下地を使わない印刷では、プリント面を比較的柔らかく仕上げやすい。
デメリットと注意点
- 濃色生地は工程が増える:前処理、白インク下地、乾燥・定着が必要になり、時間と材料費が増える。
- 前処理跡が見える場合がある:塗布量、生地色、熱条件により、印刷周辺の色や質感が一時的または継続的に変わることがある。
- 生地差の影響が大きい:毛羽、吸水性、染料、表面加工で発色・密着・洗濯耐久性が変わる。
- 段差のある場所は難しい:縫い目、ファスナー、厚いポケット付近では、プラテンを平らにできず印刷ムラや機器接触の原因になる。
- 同柄の大量生産では割高になりやすい:1枚ずつ印刷・加熱するため、数量が多い単純デザインはシルク印刷が有利な場合がある。
- 白インクの管理が必要:沈降しやすい白顔料を扱う機器では、循環、攪拌、ノズル保守など定期的な管理が必要。
DTF・シルク・転写・昇華との違い
| 方式 | 印刷先・工程 | 得意な条件 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| ガーメント(DTG) | 衣類へインクを直接印刷 | 綿、小ロット、写真、多色 | 前処理、生地差、白インク管理 |
| DTF | フィルムへ印刷後、熱転写 | 多素材、濃色、複雑な輪郭 | シート感、プレス条件、細部 |
| シルク印刷 | 版からインクを刷る | 同じ柄の量産、特色、ベタ面 | 色ごとの版代、小ロット |
| 転写プリント | 専用メディアを熱転写 | 写真、小ロット | 方式により余白・輪郭・シート感 |
| カッティング | 色付きシートを切って熱転写 | 背番号、名前、単色ロゴ | 写真、多色、細かな形 |
| 昇華印刷 | 染料を淡色ポリエステルへ浸透 | 全面柄、スポーツウェア | 綿・濃色生地には不向き |
選び方の目安:綿Tシャツへ写真や多色柄を少量ならDTG、綿・ポリエステル・濃色を幅広く扱うならDTF、同じ単色デザインを量産するならシルク、名前や番号ならカッティング、淡色ポリエステルなら昇華を検討します。
濃色Tシャツで前処理が必要な理由
濃色生地へ白インクを直接載せると、インクが繊維へ沈み込み、白さや輪郭が不足することがあります。前処理剤は、白インクを生地表面で定着させ、発色を整えるために使われます。塗布が少なすぎると白下地が弱くなり、多すぎたり乾燥条件が合わなかったりすると、跡、硬さ、色変化の原因になります。
前処理剤を使うか、塗布量、乾燥温度、白インク量は、機器・インク・生地ごとの条件に従います。エプソンも、綿Tシャツへホワイトインクを使う場合やポリエステルTシャツへの印刷で、前処理による発色改善を案内しています。
データ作成と印刷位置の注意
- 仕上がり寸法に合わせ、十分な解像度の画像を用意する
- 背景を透明にしたい場合は、透明情報を保持できる形式で保存する
- 白い部分を「生地の白で見せる」のか「白インクで印刷する」のか確認する
- 縫い目、ポケット、ファスナー、ボタンから安全な距離を取る
- 細い半透明部分や淡い影は、白下地との組み合わせで見え方が変わるため試作する
- モニター表示と布への印刷は色域・反射が異なるため、完全一致を前提にしない
洗濯耐久性を保つポイント
- 加熱定着の温度・時間・圧力を守る
- 転写・印刷後の洗濯開始時期は、加工業者の指示に従う
- 衣類を裏返し、洗濯ネットを使用する
- 強い漂白剤、乾燥機、ドライクリーニングの可否を確認する
- プリント面へアイロンを直接当てない
耐久性はインクだけでなく、生地、前処理、定着、洗濯方法に左右されます。すべての衣類へ同じ条件を適用せず、加工時の説明と衣類の洗濯表示を優先してください。
よくある質問
ガーメントプリントとDTGは同じですか?
はい。DTGはDirect to Garmentの略で、衣類へ直接インクジェット印刷するガーメントプリントを指します。
黒いTシャツにも印刷できますか?
白インクに対応する機器なら可能です。一般に前処理剤と白下地が必要で、淡色生地より工程とコストが増えます。
ポリエステルにも印刷できますか?
対応機器・インク・前処理を使えば可能な場合がありますが、染料移行や熱変形に注意が必要です。一般的なDTGでは綿主体の素材が扱いやすく、ポリエステルはDTFや昇華も比較します。
大量注文にも向いていますか?
多色・可変デザインなら数量が増えても利点がありますが、同じ単色柄の大量生産はシルク印刷の方が短時間・低単価になる場合があります。
印刷方式の相談
素材、色、デザイン、数量、希望納期によって最適な方式は変わります。法人・個人事業主向けの出力サービスは「同業種法人様向けサービス」もご覧ください。方式選びは俺流総本家(電話:0479-74-8261/平日9:00〜18:00)へご相談いただけます。
